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2000年10月16日 (月)

【シネマ収容所】『ロスト・チルドレン』

 
● シネマ収容所 ●

評論:うぢ坊


     『ロスト・チルドレン』

'95 フランス(112分)
監督・脚本/ジャン=ピエール・ジュネ
撮影/ダリウス・コンディ
出演/ジュディット・ビッテ
ロン・パールマン
ドミニク・ピノン

マルク・キャロとジャン=ピエール・ジュネの映画は、怖い。
ホラー映画でもないのに何故、そんなにも怖いのか?
その事に最近ようやく気づくことができた。
彼らの映画を観て、心に残る暗いイメージ。
それは何かに似ている…。
それはズバリ『パルナス』のコマーシャルだ!
子供の頃、日曜の朝にテレビから流れてくる
あの切ない歌と暗い映像にブルーになった人なら手を打つことだろう。
そう、キャロ&ジュネの描く世界は子供の観る悪夢そのものなのだ。
前作『デリカテッセン』もそうだった。
奇妙な世界観、強烈なキャラクター。
そのシュールな映像はまるで子供の頃に熱を出してうなされながらみた悪夢の世界だ。

だからこんなにも恐怖を感じるのだろう。
この作品のテーマが夢というのもこれで納得がいく。
さて、この『ロスト・チルドレン』だが、驚いたのはスタッフのメンツだ。
ジュネ&キャロ、ジャン・ポール・ゴルチエ、そしてアンジェロ・バダラメンティ。
どいつもこいつもゲイ。そのゲイが創り出したのが、ロリロリなお伽噺!
これは発見だ。
ひょっとしてゲイは共通して、少女性、もしくは
少女願望を持っているのではないだろうか?
純愛もキーワードかもしれない。
それはさておき、この映画の魅力は芸術性にこだわった映像美に尽きるだろう。
蚤が跳びはねて行くシーンなど、計算され尽くしたカメラ・ワーク、
どのシーンにも強烈なインパクトがあるし、全体の雰囲気もどこを切り取っても美しい。
密度の濃さが他の追随を許さない。
センスがある、と云ってしまえばそれまでだが、やっぱり映画に対する愛情が無いと
こういう映像はつくれないと思う。
だから、俺はこれほどまでにこの作品に魅了されるのだろう。
ところで、個人的にこの映画で一番印象に残ったシーンは、
敵地に乗り込んで行くミエットに、ワンがセーターの紐を結び付けるシーンだ。
このシーンには胸がキュンとした。恥ずかしながら、
俺はこういうロマンチックな演出に弱いのだ・・・。
さて、ストーリーの方は『デリカテッセン』に比べるとややシンプルで、
物足りなさを感じなくもないが、
“社会”になぞらえて物語を描くスタンスは前作と変わっておらず、そこは嬉しかった。
『デリカテッセン』は“国家”の縮図として描かれてあったが、
この『ロスト・チルドレン』はおそらくもっと小さな規模の社会、たとえば“学校”、あるいは“家族”を描いてあるように思う(だから、スケールが小さく感じるのは当然かもしれない?)。
初めに、ジュネ&キャロの作品は悪夢であると書いたが、作品の基盤は明らかに現実の社会だ。と、いう事は、彼らにとって、現実というのはドロドロとした悪夢なのだろうか?
もし、そうなら、性の解放がなされた昨今も、
やはりまだゲイにとっては生き辛いのかもしれない・・・。
この作品の後、
彼らは『エイリアン4』を任される事になるが、エイリアンのデザインが男性器の
メタファーであることを考えると、見事な人選だったと思う。
『エイリアン4』のドロドロとした世界でも
ジュネ&キャロのリビドーを堪能して戴けたら、と思ふ。

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