今日はケイト・ブッシュの『雪のための50の言葉』を聴いた。
つい最近に『ディレクターズカット』が出たばかりなのに、もう新作が聴けるなんてまるで奇蹟のようだ。
タイトルから想像出来るように、今回は"雪"をコンセプトにした全7曲と、「ミニアルバムみたいなものかな?」と曲数こそ少なく感じていたものの、実に65分と普通のアルバムと同等のボリュームで愉しめた。
まるでしっとりと降りしきる雪の様に、幻想的な『スノーフレイク』からアルバムは開かれる。全体を通してゆったりとした曲調のものが多いが、特に静かで繊細な一曲だった。"雪の中から生まれた僕"として世界に降り注ぐ"スノーフレイク"とは雪の精なのか、はたまた2曲目の『タホ湖』に登場する溺れ死んだ女性を待ち続ける犬の名なのか。じわじわと想像力をかきたてられる。
3曲目『ミスティ』は雪の精と想われる男性と一晩を共にした女性によって語られる不思議で美しい恋の歌だ。情事の後、シーツが濡れていてその姿は無かったというような描写が官能的で素晴らしい。
4曲目『ワイルド・マン』はいわゆるイエティ、雪男の類を歌った曲だ。最初は「彼の足跡を見つけた」とイエティを追う探検家か何かの歌かと想いきや、途中で「人々が彼を追い詰めて殺そうとしていること」を嘆き哀しむ。「逃げて。」という悲痛な想い。そして、彼女は見つけた足跡を消して彼の行方を隠すのだった…。きれいな4コマ漫画の様に起承転結のはっきりした詩も素晴らしいが、この曲で急にアルバムの雰囲気が変わるのもまた開放感があって善い。イエティも色々なものに解釈出来て象徴的だったと想う。
5曲目の『ウィーラー街で閉じ込められて』は、輪廻転生、歴史の中で巡り合っては失い別れる男女の物語だ。戦争や9.11でも彼らは哀しい別れを経験し、「もうニ度と君を失いたくない!」という嘆きで終わる。…まるで大槻ケンヂの『モンブランケーキ』の様な歌詞だな(w。エルトン・ジョンとの念願のデュエットも感動的だ。
6曲目『雪のための50の言葉』はエスキモーには50種類も雪の呼び名があるという伝承をモチーフにした曲で、まさに芸術的、革新的、挑戦的、実験的かつ野心的な楽曲だがや!以前、このブログでも『π(パイ)』という曲で3.1415926535....にメロディーを付けやがった!と絶賛したが、それにも匹敵する驚きがあった。1から50までケイトが数字を読み上げるとスティーヴン・フライが雪にまつわる単語(?)を一つずつ並べる。聴いている間にその一つ一つが心に積もって行くのを感じる。
7曲目『天使にかこまれて』は解釈はおいといて、ただシンプルな楽曲の美しさに魅せられたとだけ伝えたい。是非、御自身の耳で確かめて下さいな。
総てを通してこのアルバムは今年のこの冬に最も必要で重大な意味を持って現れた一枚だと感じた。
我々の生命は雪の様に大地に降り注がれ、融けては消えて行く。
50の名を持つ雪のように、何億もの名を持って。
その意味は何かを雪の白で隠すためなのか、歴史の癒しなのか判らないけれど、
その儚さにただ祈りを捧げたい。
今年失われた多くのいのちを忘れないための、
2011年屈指の名盤が今やっと届いたという感じだ。
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